亘さんは世渡り上手

■■■



「父さん。俺、母さんに会ったよ」



ガシャン、と音をたてて皿が割れた。


父さんは手から滑り落ちた皿なんて気にする素振りも見せず、信じられないような顔で俺を見ている。



「……ど、どういうことだ、理人」


「どういうって、言葉通り。俺の、産みの母親に会ったんだよ」



強く肩を掴まれた。



「そういうことを聞いてるんじゃない! なんであの女に会ったんだって聞いてるんだ!」


「母さん、再婚してたよ」


「……っ、理人!」


「俺の友達の母親になってた」


「そんなこと、どうでもいい」


「世間って狭いね」


「俺の話を聞け!」



俺は肩に乗る手をゆっくりと払う。



「友達が母さんのせいで悲しんでた。だから会って一言話しただけだよ」


「っ、あいつは、別のところに言っても同じことを……」


「全然違うよ。ちゃんと約束してきたんだ、今の家族が本当の家族で、俺はもう他人だと思ってって」


「……っ」



父さんはギリギリと歯を食いしばって、なんとか手が出そうな勢いを食い止めている。


確かに、これは、俺の生まれて初めて父親にした反抗だったかもしれない。

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