亘さんは世渡り上手
呆れた表情の父さんを前に、俺と亘さんは正座をして頭を下げていた。
いくら亘さんとはいえ女に押し倒される体制の俺にはトラウマのある父さんにとって、これは由々しき事態だった。
はぁー、と父さんがため息を吐く。俺はそれにびくりと反応してしまう。
「理人」
「……はい」
「父さんは理人のことを信頼しているけど、だからといって見過ごせることじゃなかった。わかるだろ?」
「……うん」
「あの、元はと言えばわたしが寝てしまったのが悪いので……」
「いいや、叶葉ちゃんは悪くないよ。理人が気を付けなかったのがいけないんだ」
フォローしてくれた亘さんには悪いが、まったくもってその通りだ。
俺はもっと気を付けなくてはいけない。父さんをもっと安心させるように行動しなければ。
「……と、まぁ注意はこれくらいにするよ。二人とも、父さんは今から買い物に行ってくるから、少しの間留守番をしていてくれ」
俺の決意が伝わったのか、父さんは真剣な顔を緩める。
「え、父さん……?」
「もしかすると、遅くなるかもしれないな」
にっこりと笑う父さん。
え、それは、つまり……。
亘さんと、少し赤くなった顔を見合わせた。
「ただし、節度は守ってな」
俺は全力で頷いた。