亘さんは世渡り上手


その日は一日中、亘さんが変だった。


時間があれぱぼーっと一点を見ているし、俺の顔に対しては視界に入った途端さっと逸らされる。


ただ、俺が悪いことをしたとかではなさそうだった。逸らされた後は必ずと言ってもいいほど顔が赤いのがわかるからだ。


急にこんな意識されても、俺はもっと亘さんに近付きたいんだけど……。


あー……キスかもなぁ。


キスをしたのがトリガーな気がする。


思い出して恥ずかしいのかもしれない。


俺は一度してしまったからか、またしたいと思ってるけど……。あんなに意識するほど亘さんが恥ずかしいなら、抑えないとな。


放課後、一緒に並んで帰っている間も、会話はかなりぎこちない。



「い、和泉くん……」



すると、亘さんは立ち止まってその赤い顔をゆっくりと俺に向けた。



「お、お話があるのですが……」


「ん?」



手招きしてくるので、耳を近付けた。その際に「ひゃっ」と可愛らしい声をあげるので、すぐに離れる。


亘さんにここまでわかりやすく意識されたことがないから、こっちも恥ずかしくなってくるんだけど。


なんなんだ。なんで付き合ってからこんな空気になるんだよ。



「ええと……わたし、今日おかしいですよね……?」



さらには自白してきた。

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