亘さんは世渡り上手


完全に外で出掛ける想像をしていた俺は、その返しに固まってしまう。


亘さんの、家……? 亘さんの家族がいたっていなくたって危険な場所のことですか……?



「無理には言いませんが……。実は恋人ができたことが家族にバレまして、会いたいと言って聞かないんです」



いる方か――!


家族に挨拶ってそれ、結構プレッシャーが……いや、亘さんはもう俺の家族には済ませてたんだった。


まさか二人きりで過ごす、以外の選択肢を突きつけられるとは思わなかった。


こういうときってどうすればいいんだ。手土産とかいるのか? 服装っていうとスーツ……は持ってないし、制服……いやこれもおかしいだろ。



「……やめましょうか?」


「いや! い、行く! 行かせてもらいます!」



亘さんの彼氏として紹介してもらえるんだぞ!? ここでいかないなんて、根性がないやつだって失望されかねない!


新しい服を買わないと……。清潔感があって、どの年代にも受けが良さそうな服を……。



「少し顔を見せてもらうだけでいいですよ? そんな堅くならなくても……。その後は、二人で出掛けましょう?」


「望むところだ!」


「い、和泉くん~……戻ってきてください~……」


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