亘さんは世渡り上手
寒さも吹き飛ばすくらいの俺達二人の熱。
これは当分手袋はいらないな、なんて考える。
という矢先だ。
「――――叶葉?」
彼女の手のひらが、段々と冷えていくのを感じた。
亘さんの名前を呼んだのは、他校の制服を着た女子だった。
彼女は亘さんを驚いた顔で見ると、気まずそうに笑う。
「あ、あは……久しぶり。元気そう、だね」
「……お久しぶりです」
「えっと……彼氏?」
そう言って俺に目線を移す。
一体どういう関係だろう。久しぶりと言っている辺り、昔の同級生だろうか。
でも、どうしたって仲良しだったようには見えない。
「……はい。恋人、です」
亘さんの表情も暗い。
「そ、そっか……」
「……」
「……」
やがて沈黙。
俺はどうしていいかもわからず、するりと離れていった亘さんの手に寂しさを覚えていた。
「私、さ……。叶葉の笑顔を奪ったこと、ずっと謝りたくて……」
「いいですよ、もう……」
「お願い、謝らせて……!」
「もう遅いんですよ!」
声を荒げた亘さんに、びくりと肩を揺らして驚く相手。
「もう、忘れてましたよ、そんなこと……」
「叶葉……」
「わたしにとっては、その程度のことなんです……」
「あ……」
「だから謝らなくていいです」