亘さんは世渡り上手
ここで否定するのはもったいなくないか?
俺が亘さんに気があることにすれば、こいつらはまた俺に気を遣って、必然的に亘さんと二人になれる時間が増えるよな。
さらなる亘さんの弱味を握るためにも、それは俺にとって都合がいい。
それだ、そうしよう。
「というより、亘さんが相手をしてくれなかったんだよね」
「マジか! まー、委員長手強そうだもんなー」
「そうそう。見つめ合っても無表情のままでさ」
「理人みたいなやつでも苦戦する女子いるんだな! ざまーみろ! ……じゃなくて、頑張れよ!」
本音漏らしすぎだろ。別に気にしないけど。
「あ、そうだ! これ使えよ!」
そう言って高橋が取り出したのは、二枚の映画のチケットだ。
「なんでかわかんねーけど、カバンに入ってたんだよなー。なんでかわかんねーけど……なんでか……なんでか……うぅっ、夏海……っ」
ああ……使う前に彼女にフラれでもしたのか。
「どうかおまえが使って葬りさってくれ……っ!」