亘さんは世渡り上手
興味のないことに付き合わされて、いい加減教室に戻りたい。
さっさと会話を終わらせてやろうと提案してみると、三好先輩は素直に頷いた。
「確かに……そうだね。そうしてみるよ」
「――何がですか?」
そこへ、割り込んでくるひとつの声。
三好先輩を疑い深く見上げた、わかりやすい敵意。
「また和泉くんに突っかかってるんですか、先輩」
亘さんは俺の隣へ移動すると、俺にぴったりとくっついて三好先輩を牽制した。
「あぁ、亘ちゃん。いや、そんなんじゃないよ。ね、和泉くん?」
「え? あー……そう、ですね」
「煮え切らない返事だなぁ」
「無理矢理話に付き合わされてたのには違いないですからね」
その会話に、亘さんがやっぱりと言いたげに三好先輩を睨む。
ただ、三好先輩の真摯でもある一面を見た俺としては、あんまり責める気にはならなかった。
「いいよ、亘さん。俺も話に付き合った身ではあるし」
「……嫌じゃなかったですか?」
「嫌だったけど、不快ではなかったから」
「そうですか……」
先輩が悪いことをしたかと問われると、別にそうでもないなという結論に至るわけだし。
人間的に好きじゃないだけで。
「色々言いたいことはあるけど……もうそろそろ予鈴がなるし、もう行くよ。じゃあね、和泉くん。話聞いてくれてありがと」
苦笑をした三好先輩が軽く手を振って帰っていく。
あの人、なんで俺を気に入ってるのか未だによくわからないんだよなぁ……。