亘さんは世渡り上手


終業式が終わって、教室の空気は解放感に溢れている。


やっと終わった、と安堵する俺達を待ち構えていたのは、課題である。


たった三週間程度の休みに宿題を課すなんて、というブーイングが始まったものの、結局拒否権なんてなく後ろにテキストを回していく不服そうな面々だった。


そんな帰り道。



「ほんと嫌になるよな~宿題って」



不服そうな面々のひとりである高橋。口を尖らせて、ぶつくさと文句を言い続けている。



「勉強はやらないと忘れちゃいますからね。短期間でも休みだからこそ勉強させるんだと思います」


「やっても覚えてねーから意味ないっての」



亘さんのフォローまるでなんて届いていない。



「クリスマスは皐月ちゃんに断られるし……」



と、そこで不機嫌な理由が明らかになる。


なるほどな。たぶん皐月もクリスマスは家族で過ごすんだろう。


あいつの優先順位は、悔しいけど俺とあまり変わらないところがある。



「高橋、安心しなよ。八木もクリぼっちだから」


「ちょ、なに急に……。あたしは作ろうと思えば作れるから」


「ふーん? じゃあ冬休みの間に作ってみ?」


「いいよ?」



余所でバチィ! と火花を散らしている谷口と八木。


そういえばここで恋人の影もないのは八木だけか。別に……無理に作る必要はないと思うけど。

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