亘さんは世渡り上手



図星だった。


だけどまさかこの俺が、ただのクラスメートに心を読まれるなんて思わなかったのだ。


おかしいな、表情はいつも通り軽い笑顔のままだったはずなのに。


この笑顔で、一体何人を騙してきたかわからない。騙せていたのだ、こいつが気付くまでは。


でも、まだ向こうも半信半疑といったところだろう。まだごまかせる。



「そんなことないよ。せっかくクラスみんなでカラオケに来たんだから、楽しくないわけないでしょ」



何度も練習した完璧な笑顔を貼り付ける。



「そうですか……?」


「うん。ほらほら、亘さんも楽しんで来なよ!」



少し強引に亘さんを部屋の中に押し込むと、二度目の息を吐く。


やばいな、亘さん。まともに話したのなんて今日が始めてだったのに、あそこまで見透かしてくるとは思わなかった。


部屋に入る直前まで疑わしそうにじっと見てきてたし……俺、大丈夫かなぁ。


高校生活まで壊されたら、たまったもんじゃないんだけど。

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