亘さんは世渡り上手



「はいはいはいはいはい! 俺全部わからん!」


「はい亘先生! あたしを先にお願いします!」


「亘先生、この答えあってる?」



あー、やっぱり。


亘さんの取り合いが始まった。


おろおろと慌てながら対応していく亘さんを見て、俺も勉強を始めようとテキストを開く。


うわ、亘さんすごい。三人同時に相手できてる。



「……り、理人、理人」


「ん?」



四人の中で一人だけ、高橋をウザがりながらも黙々と勉強をしていた谷口が俺の袖をくいくいと引っ張って来た。



「ここ、わかんない」



小声で聞いてくる谷口。


亘さんに聞くのはさすがに申し訳ないとでも思ったのだろうか。


谷口が指さしたところはちょうど昨日亘さんに教えてもらったところだったので、難なく教えることができた。



「ああ、これは……」


「うんうん、あ……そっか、なるほど。ありがと、理人」



谷口はパッと明るく笑った。

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