亘さんは世渡り上手
第二章『友達』
亘さんと恋愛映画
俺は悩んでいた。
亘さんに映画のチケットを渡すべきか、渡さないべきか。
ちょうど今最後のテストが終了したチャイムが鳴って、クラス全体の緊張感が紐解かれたところだ。
あれからテストまで毎日放課後テスト勉強をしていたから、さすがにあの高橋も悪い点数はとらないだろ。
その高橋からもらった映画のチケット。もらったときは正直よく見ていなかったんだけど、家に帰ってから確認すると、中高生の女子向けのラブストーリー映画だった。
……父さんと二人でこれを見に行くのは、ハードルが高くないか?
いや、父さんなら嫌な顔しないで一緒に行ってくれるとは思う。だけど、男子高校生からするとかなりキツい。
だから、亘さんを誘っても……いいけど……。
「理人! 何ぼーっとしてるんだよ! ホームルーム始まるぞ! んで、帰りにボーリング行こーぜ!」
「高橋くん、帰りはまっすぐ帰りなさい!」
「げっ! 先生ぇ!」
ホームルームか。カバンを取りに行かないと。
「おいっ、逃げるなよ理人! 俺ら友達だろ!?」
高橋と共犯は勘弁だな。