亘さんは世渡り上手


俺は別に亘さんと仲良くなりたいわけでもなければ、好かれたいわけでもない。


なのに最近テスト勉強でよく一緒にいたからか、放課後以外も話す頻度が増えてしまった。


つまり、今の俺達の関係は……普通に友達だ。


亘さんは俺と仲良くなりたがっていたから、これは良いことなんだろう。


……が。



「それで、何か用事ですか?」



――俺は、それでいいのか?



「今度二人で映画見に行かない?」



俺はこのまま亘さんと仲良くなるのは危険な気がする。それは、ずっと頭の中に残してきた。


というか、仲良くなる予定でもなかったはずだ。



「映画……ですか?」


「うん。チケットもらったんだけど、興味ない?」



……変わったのは、二人きりで勉強会をしたあの日。


あの日、俺は自覚してしまったんだ。


俺が、亘さんが自分より格上なのに嫉妬してるだけのつまらない男だって。俺が亘さんに勝てるものは何もないんだって。


わかってしまったんだ。

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