亘さんは世渡り上手
頭の中で全てが喧嘩する。矛盾だらけで、処理が追い付かない。
だけど、言葉だけは何も考えずにすらすらと出てくる。
嘘を吐いて、表面に貼り付ける。これが俺が今までやってきたことの集大成か。
「なんの映画ですか?」
「んーと、これなんだけど」
チケットを亘さんに見せた。綺麗な顔をした男女が身を寄せあって、嬉しそうにしている画像が写っている。
亘さんは一瞬ポカンと口を開けて、俺の顔とチケットを交互に見比べてきた。
「ええと……これを、わたしとですか?」
あー、やっぱり、男と二人で恋愛映画は嫌か?
「うん、そう。デートってやつだね」
「で、デート……? でもこの間わたし、二人で遊びに行きませんかって言ったときに断られませんでしたっけ」
「何言ってんの。俺ら、あのときとは関係が違うでしょ?」
「え、じゃあ、今のわたし達の関係って……」
ここでへまする俺じゃない。
亘さんが欲しがってる言葉はわかってる。
「友達でしょ?」
「ぜひ二人で行きましょう」
うわ、即答じゃん。