亘さんは世渡り上手


ていうか亘さんこそ、楽しんでるのか?


どう見てもいつもの無表情だし、ちゃんと感情とかあるのかよ。


あれでどうして友達が多いのか、理解できない。



「あー……帰ろ」



適当に家の用事ができたってでっちあげれば誰も引き留めないだろ。


制服のポケットからスマホを取り出して、耳に当てる。



「えーっ、マジ!? 今から!? そりゃないよ母さん!」



そのまま部屋に戻って、誰かと話してるように取り繕いながら帰る雰囲気を作ることに成功した。


まぁ、俺にかかればこんな演技簡単だよな。


不満そうにするやつらは数人いたけど、家の用事なら仕方ないと諦めてくれる。


俺はそいつらにごめんと頭を下げて、席から鞄を取った。


近くに座っていた亘さんが呟く。



「……やっぱり、そうだったんですね」


「ん? どうしたの、亘さん」



亘さんに向かってにっこりと笑う。


彼女には、感付かれてしまったわけだけど。


亘さん一人くらい、どうにかできるでしょ。

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