亘さんは世渡り上手
「そういえばもうすぐ体育祭ですけど、和泉くんはどの種目に出たいとかあるんですか?」
「あー、もうそんな時期かぁ。……んー、まだ何があるかはっきりわかってないからなぁ。亘さんはあるの?」
「はい、借り物競争です!」
亘さんは珍しく大きな声で、体が浮きそうなほど胸を張った。
目はキラキラと輝いている。
「中学の頃から、楽しそうだなぁってずっと思ってたんですよね」
「中学では出なかったの?」
「……あ。ええと、はい。わたしには残りもので十分でしたから……」
ん? なんで今、ちょっと間があったんだ?
それに、少しだけ言い方も引っかかったな……。
まぁ、いいか。亘さんのことを積極的に知りたいわけでもないし、詮索する理由もない。
そうやって他愛ない会話をしている内に、映画館の前に着いていた。
「あ、着きましたね。ポップコーン食べます?」
「食べる食べる。亘さんはポップコーンの味、何が好き?」
「ええと……塩、ですかね」
「じゃあキャラメルと半分のやつでいい?」
「大丈夫です」
ポップコーンと飲み物を注目していく。