亘さんは世渡り上手
俺は、亘さんがこのデートをデートだと思ってないことが悔しかったんだ。
この俺が隣にいるというのに。他の女なら、絶対に顔を赤らめてもじもじとするはずなのに。
だから、こんなにイライラするに違いない。
こうなったら―――意地でも意識させてやる。
さりげなく会計を済ませようと財布を取り出すと、横からガッと腕を掴まれた。
「駄目です。あっても割り勘ですよ」
「亘さん、ここは男に払わせるもんだよ」
「駄目です。わたしなんかと一緒に遊んでいただいているだけでも光栄なのに、お金まで全部出されるわけにはいきません」
この女……手強いな。
店員に一瞬呆れた表情をされてしまった。茶番だとでも言いたいんだろう。
粘っても亘さんが折れることはなく、結局割り勘になった。
さすがに持つくらいはやらせてほしいと言って持たせてもらえたけど、ポップコーンが落ちないか置くまで見られて落ち着かない。
……やっぱり、俺ばっかり動揺してないか?