亘さんは世渡り上手
友達が二人になる。
父さんの下に、亘叶葉という名前が増える。
え、亘さん、叶葉って名前だったのか。知らなかった。
「なんだかもったいないので、よっぽどのことがない限り送れませんね……」
「それでいいよ。ただ、俺から送ったら返事してね。寂しいから」
「あたりまえです」
亘さんがぐっと胸の前で拳を握る。
本当に、初めての友達みたいだ。
初めてのデートといい、俺は亘さんに初めてを奪われすぎじゃないだろうか。まぁ、どっちも、俺から誘ってるんだけど。
そう考えると、俺って意外と……亘さんと仲良く、なりたかった、のか?
げぇ、なんだそれ。気持ち悪。
「そういえば和泉くんはクラスのグループにも入ってなかったですね。招待しましょうか?」
「しないで。俺と亘さんだけの秘密だって、言ったでしょ?」
「……ということは、わたしは和泉くんの連絡先を知っているということを言ってはいけないということですね?」
「うん。言わないで」
「……わかりました」
今はまだ、亘さんだけでいい。
クラスで一番俺のことを知っている、亘さんだけで。