亘さんは世渡り上手

■■■



「亘さんと行ってきたよ、映画」


「おっマジ!? どうだった!?」


「それは、映画の感想を聞いてるの? それとも……」


「委員長とデートした感想に決まってんだろ!」


「だよな……」



週が明けて、月曜日。高橋は今日も騒がしい。


一応チケットをもらったお礼もかねて報告をしてやったら、そりゃあもう食いついた。


机に頬杖をついて、あまり思い出したくないけど、一昨日のことを思い出す。



「まぁ……楽しかったんじゃないかな」


「え、もうやった? キスくらいはやったんか? え?」


「おっさんかよ……」



ニヤニヤと口を抑えて顔を近付けてくる高橋にため息が漏れる。


無理矢理言わされてしまったけど、俺は、あのデートをまぁまぁ楽しいと思っていたのだ。


もちろん亘さんと恋人になりたいなんて感情はない。でも、少しだけ意識はしてしまった。あれは失敗だった。



「亘さんには、ゆっくり近付くのが一番だってわかったよ」



だって亘さんは俺と友達でいたいんだから。

< 49 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop