亘さんは世渡り上手
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「亘さんと行ってきたよ、映画」
「おっマジ!? どうだった!?」
「それは、映画の感想を聞いてるの? それとも……」
「委員長とデートした感想に決まってんだろ!」
「だよな……」
週が明けて、月曜日。高橋は今日も騒がしい。
一応チケットをもらったお礼もかねて報告をしてやったら、そりゃあもう食いついた。
机に頬杖をついて、あまり思い出したくないけど、一昨日のことを思い出す。
「まぁ……楽しかったんじゃないかな」
「え、もうやった? キスくらいはやったんか? え?」
「おっさんかよ……」
ニヤニヤと口を抑えて顔を近付けてくる高橋にため息が漏れる。
無理矢理言わされてしまったけど、俺は、あのデートをまぁまぁ楽しいと思っていたのだ。
もちろん亘さんと恋人になりたいなんて感情はない。でも、少しだけ意識はしてしまった。あれは失敗だった。
「亘さんには、ゆっくり近付くのが一番だってわかったよ」
だって亘さんは俺と友達でいたいんだから。