亘さんは世渡り上手
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「あの……昨日はすみませんでした」
翌日、なぜか俺は亘さんに謝られていた。
びっくりした。人の少ないところに連れていくから、告白かと思った。
内心びくびくしながら付いていった時間を返してほしい。
「なにが?」
「楽しくなかったんですよね。実は、最初にクラス全員で遊びたいと言ったのはわたしなんです。だから、もっと相談してから場所を決めるべきでした」
あー、なるほど。
亘さんは、カラオケだったから俺が楽しくなかったって思ってるんだ。
「いやー、こんななりして言うことじゃないんだけど、俺あんまり人多いの好きじゃないんだよね」
これは本当だ。
大勢で行動することのメリットがわからない。
でも、俺の周りには自然と人が集まってきてしまうから、放課後くらいはゆっくりしたかった。
「なるほど、わかりました」
亘さんはそう言うと、胸ポケットからメモ帳とペンを取り出して何かを書いていく。
「それ何?」
「クラスのみなさんについての情報をメモしているんです。わたし、クラス委員長なので、広く周りを見ていたくて」
えー、きも。
「えー、きも」
あ、やば、声に出しちゃった。