亘さんは世渡り上手



「……ふーん」



高橋はつまらなそうに頭をかいた。



「でもさー、好きだったら早く付き合いたいと思わねぇ?」


「まぁそこは、思想の違いでしょ」


「そうかぁ?」



高橋は単細胞だからな。思い付いたらすぐに行動できるような、まっすぐな考え方をしている。


俺は……そういう人間の方が、楽に生きていられるんだろうと思う。



「委員長って顔可愛いし、性格も良いし、わりとモテるだろ。ずっと友達でいたら誰かに奪われるぞ」



こうな! と高橋は何かを引き寄せる動作をする。


そのとき、偶然誰かに手が当たってしまったようだ。「いたっ」という声とともに、高橋の怯える顔が見えた。



「高橋、痛いんだけど!」


「お、おう、谷口、ごめんなさい……」



高橋にはひときわ当たりの強い谷口だった。


高橋は完全に萎縮してしまっている。



「もう、何やってんの!?」


「理人と少しおしゃべりをしていただけです……」


「……え? あ、理人おはよっ!」


「ひえぇ……」



俺に気付くと怖い顔からうって変わって明るい笑顔に早変わり。


高橋が小さく「谷口さんぱねぇ……」と呟くのを俺は聞き逃さなかった。


谷口さんぱねぇ。

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