亘さんは世渡り上手


少しがっかりだ。


亘さんは違うと思ったのに。亘さんは俺のことを好きにならないと思ったのに。


それを俺に気付かせなかったところだけは、ほめてやろうかな。



「私だって、負けないんだからー!!」



という谷口の叫び声と走り去る音を聞いて、息を吐く。


でも……谷口が勝ったところで、俺は谷口の気持ちには答えられないんだよな。とりあえず付き合ってみるなんて選択肢、俺には現れない。


女っていうのは、わからないんだ。いつ本性を現すかわからない。


好きでもない相手と付き合ったとき、同じくらいの愛をあげられなかったら……そして、そのせいで彼女を傷付けてしまったら……。そう考えると、酷く恐怖が襲ってくる。


腹の辺りが痛い。


亘さんがゆっくりと教室へ戻っていく姿を見て、俺も気付かれないように後を追った。


ぎりぎりぎり。


ぐらぐらぐら。



……頭もくらくらしてきた。

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