亘さんは世渡り上手
どうして亘さんは俺を気にするんだ。
来てほしくないと思ったときに限って来てしまう。
こういう行動が、俺の心を苦しくする。亘さんは俺のことを好きなのだと理解させられてしまう。なのに、やっぱり俺は亘さんが俺を好きだとは思いたくない。
元々こういう人なんじゃないのか? 好意なんて関係なく、委員長だからやっているだけ。
そう、委員長だから……。
必死に俺の横をついてくる亘さん。さっきから明らかに歩数が違う。
「亘さん、借り物競争になれた?」
「……何言ってるんですか、知ってますよね。和泉くん、聞いてたじゃないですか」
「…………………気付いてたの?」
「はい」
そうか。なんだ。俺、隠れるの下手じゃん。
はは、と乾いた笑いが出た。
それ以外は頭が真っ白で何も言葉が出なかった。
「わたし、絶対に谷口さんに勝つので。安心してください」
珍しく亘さんにしてはハズレだ。
俺は、亘さんに勝ってほしくないんだよ。