亘さんは世渡り上手


少し想像しただけで目が霞んできた。


視界の中の亘さんがぼやけて、ぐるりと回る。


喉の奥で、あの嫌な香水の臭いがじわじわと―――


あー、だから。


亘さんごときで俺の高校生活を壊されるのは許せないんだってば。


俺は軽く頭を振って大きく息を吸った。


……ほら、なんともない。


目の前の亘さんも、俺をじっと見てる。


大丈夫、大丈夫。



「亘さんって、すっごく人のこと見つめるよね」


「え? あ……そうですね。なんとなく、癖で。……もしかして、これもされて困ることでしたか?」


「いーや、大丈夫」



メモしようとする亘さんの手首を取って、にっこり笑った。


本当に、厄介だなぁ、亘さんは。


亘さんの手に、自分の手を絡めてみる。


彼女のひんやりとした体温が伝わってきた。



「でも、見つめられるとちょっとドキドキするかも」


「――えっ」



亘さんの目が見開かれていく。

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