亘さんは世渡り上手
さぁ、どうでるかな、亘さんは。
これで落ちてくれたら楽なんだけどなぁ。
「そ、それは――
いけませんね。今すぐ離れます」
亘さんは俺の手を振りほどき、三歩後ろに下がった。
……ん?
なんでそういう結論に達するのかわけわからん。
ナチュラルに拒絶されたって考えてもいいのかな。
別に傷付きはしないけど、ちょっとむかつくな。
っていうか、またメモしようとしてるし。
なんて書くつもりなんだ?
和泉くんはわたしに見つめられるとドキドキするからあまり見つめないようにする、とか?
いやいや。
「亘さん、メモするときは申告してって言ったよね」
「あっ。そうでした……では、してもいいですか?」
「だめ」
「えっ。駄目……ですか?」
「うん、だめ」
そんな情報、メモに残されてたまるか。