亘さんは世渡り上手


『和泉理人』は。


人気者で明るくて、少し女の子に対しては軽い態度になる。気のあるふりをして女の子をからかっても、許される。


そして、最近は笑わない亘さんに興味を持って、次第に好意に変わっていった。


でも、俺は。


人とつるむのが苦手で、俺に好意を持つ女の子に対しては逃げようとする。気のあるふりをしても、内心は嫌われたいと思っている。


そして、最近は亘さんと友達でいたい。『和泉理人』のために亘さんを好きになろうとするけど、俺を見透かす亘さんに恐怖し、次第に安心し、実は憧れている。


俺と『和泉理人』は、まるで違う。


でも、たぶん、亘さんの言う和泉理人は、俺のことだ。


亘さんは、俺のことを見ようとしている。



「亘さんは――俺のことが、知りたいの?」


「はい。あなたのことが、気になって仕方がないです」


「……俺のこと好きなの?」


「正直、恋愛感情ではないと思います」


「じゃあなんで、谷口とあんな勝負なんてしたの?」


「あなたは谷口さんに告白されたら、断ると思ったからです。だから、わたしが勝つしかないと思いました」



それは……俺のため? それとも、谷口のため?


亘さんは、どこまで俺のことを察している?

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