亘さんは世渡り上手

「亘さんには、俺はどう見えてる？」


「優しくて、気遣いのできる人気者です。でも、自分への好意が苦手な人。たぶん、それには何か理由があって、それをわたしに知られるのを怖がってるんじゃないかと思っています」


「……そうやってほとんど正解を言うから、怖いんだけど」



俺はへらりと笑う。



「後は、たまに笑顔がへたです」


「あー、もう、言いすぎ。亘さん以外にはバレてないんだからいいじゃん」



俺は作り笑顔をやめた。


もう亘さんの前では何をやっても無意味だ。全部バレてた。無駄に表情筋を使ってられるか。


なんだか吹っ切れた。ぐだくだ悩んで、嘘を塗り重ねていたのがバカみたいだ。



「……最後に、もう一個質問いい？」


「はい」


「借り物競争のお題なんだったの？」


「『大切なもの』です」


「ほぉ～～、ふ～～ん」


「ん……？　……あっ！？　はっ、ハメましたね！？」


「そっちが勝手に答えたんだろ？」



みるみる真っ赤になっていく亘さん。グッと唇を噛んで、体をふるふると震わせる。



「……可愛い」



ふ、と笑顔と一緒に思わずこぼれた言葉に、亘さんが目を見開く。俺は否定する気力もないまま、もっと亘さんのまぬけな顔を見るためににっこりと笑った。