亘さんは世渡り上手

愛されることは、嫌なことばかりじゃない。



「亘さん、ありがとう。俺……亘さんと友達になってよかった」



あのまま亘さんを嫌いだと思って自分の気持ちに逃げたままだったら、何も前に進めていなかった。


自分の気持ちに素直になること。


それが俺が変われるかどうかの鍵だ。



「……はい。わたしも、和泉くんと友達になれてよかったです」



素直になるのは胸がむず痒い。


でも、俺は笑っていた。作り笑顔なんかじゃなく、ちゃんと心から俺の意思で。



「それにしても亘さん、俺のこと大切だと思ってるんだ？」


「そ、それはもういいじゃないですか！　なんですか、せっかくなかったことにして許してあげようと思っていたのに……」


「正直亘さんの照れるポイントが全然わからない」



なんで俺と顔が近くても照れないくせに、そんなお題で照れるんだよ。……まぁそれも、亘さんらしいか。それよりも、動揺する亘さんなんて珍しいしここで堪能しておこう。



「……な、なんですか、にやにやして……。それ、へたな笑顔より嫌です」


「亘さんって面白いところもあるんだなって」


「面白がっているんですね」


「うん、面白がってる」



亘さんがふい、と顔を逸らした。俺はそれにけらけらと笑って、不満そうな亘さんの手を取る。