亘さんは世渡り上手


やっぱりそうだったのか。亘さんにとって、谷口は友達だった。俺と同じ、何十人もの友達の中の一人。


ふーん……そうだよな、亘さんは俺とは違って、友達が多いもんな。別に、俺じゃなくても……って、なに今更ひがんでるんだよ。


変だな。そんなことはもうわかりきったことだと割りきれていたはずなのに。



「亘さんが変になったのはおそらく体育祭の翌日……。根拠は私があんぱん早食い競争を挑んでも遠慮しておきますと断られたから。

そう考えると、原因は……あれ、だよね」



ぶつぶつと独り言を言い終わった谷口は、亘さんへのひがみが再発して困惑する俺を驚いた顔で見つめた。



「理人……亘さんのことフったんじゃない?」


「……え?」


「絶対そうだ! 愛の告白じゃなかったって言ってたけど、フったことを私にバレたくなかったんでしょ! 亘さんのことが気になってるとか言って、もてあそんでたんだ! うわ、あり得る~!」



いや……ちょっと待ってくれ。


そこで矛先が俺に向くの?



「フラれたら落ち込むのなんて当たり前なのに、亘さんの気も知らずにいつもどおーり挨拶してたんでしょ! あーあ! だからじゃん! だから亘さん、もう私と遊んでくれなく………ん? これは違うか」



おいおいおいおい。黙ってたらどんどん膨らんでいくぞ?

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