茜空
…楓ちゃんは
どうしたい?
運転しながら彼は聞いた
どうって………
……わかりません…
楓ちゃんの事
僕は気に入ってるよ
最初はね…
ただの社長の
気まぐれお嬢さん
かなって思ってた
でも
君は有能で
健気な子だった
…僕が独身だったら
交際になってたかもしれないね……
沢井さんは
アタシの住む
マンションのそばにある
人気無い夜の公園脇に車を止めた
…もう
泣かないで…………
優しく髪を撫でた
沢井さんの手は
そのまま頭を包み込み
アタシを引き寄せて
彼は
そっと
アタシの唇に
唇を重ねた
沢井さん…!
僕は…
楓ちゃんなら
ちゃんと尊敬できるし
女性としても
かわいいと思える
……けど
正直
家庭も仕事も
捨てることはできない
……それでもいいんです
とは
アタシ言いたく
ありません
ホントは
沢井さんを
全部独り占めしたい…!
だけど
一番は
…失いたくないんです
…だから
今のままで
側に居させてください
……楓ちゃん
好きになってくれて
ありがとう
楓ちゃんが
居てくれるだけで
僕も安心できるよ
カチッ
沢井さんは
ドアロックを解除した
今日はここまで
また明日
沢井さんの笑顔が
胸を疼かせた
アタシは
車を降りる
沢井さんは
降りなかった
結局は
仕事のパートナーにしか
なり得ない
分かってる
でも
彼の温もりを感じられる
場所に居られるなら
私にとって
それは
何よりも
一番
大切な事