約束と契約
今日は私の二十五歳の誕生日。
あの約束の日から十年が経っていた。
「雪、私の代わりにコレを身につけていてほしいの。」
ずっと肌身離さずつけていたネックレスを外すと、不思議と肩の荷が降りた気がした。
淡く蒼く光るダイヤが一つ埋め込まれた指輪のついたソレは、生きていくのに欠かせないものになっていた。
「これって・・・お姉ちゃんの大切なモノなんじゃないの?」
一度も外した事がなかったからか、彼女はわかりやすく戸惑っている。
私にはもう必要がないソレは、今は彼女の首元で妖しく輝いている。
「そうね。大事だから持っていてほしいの・・・。」
瞳を直視することが出来ず、目を逸らしてしまう私を心配そうに覗き込む彼女は、ふと時計を見て焦り始めた。
長い針はちょうど真上を指しており、慌てて靴を履く彼女に鞄を手渡すと休む暇なく外へ飛び出す。
「何かあったらソレに手を添えて・・・!」
後ろを振り返らず手を振る彼女を最後に、私は意識を手放した。