ツララなるままに……いぬの章
「ちゃーーっす」
隣接する部屋から1人の女子が現れた。
金色に近い明るい茶色の髪をした少女に、千和子は見覚えがなかった。
雑誌で表紙を飾るようなお洒落な私服姿。
もちろんスタイルも顔も良い。
こんな綺麗な人が身近にいれば、生徒の間で噂になっているだろう。
間違いなく学校の関係者ではなさそうだ。
モデルさんか女優さんかな? 彼女をひと目見て、そんな感想を抱いた。
だけど、ツララという名前には覚えがあった。
感情を高ぶらせた千和子は、恐る恐る彼女に声をかける。
「……ツララちゃんなの?」
「だよ。お前は相変わらず小さいな、チワワ」
「ツララちゃん!」
知った相手だと分かった瞬間、千和子は勢いよく飛び付いた。
氷柱は優しく千和子を抱き締める。
「はは、マジで犬みたい! よしよし、いい子だなチワワは」
「ツララちゃんは変わり過ぎ! 超可愛い! 名前聞いてなかったら、誰だかわかんないよ!」