ツララなるままに……いぬの章

 彼女は鬼塚氷柱(おにづか つらら)
 千和子らと同い年で、今この場に集まっている全員の幼馴染み。

 氷柱が千和子をチワワと呼ぶのは犬に似ていて、名前のをもじっているから。
 チワはそこから派生した呼び名である。


 小学生以来の面会に嬉しさを隠せず、千和子はみんなを差し置いて氷柱を独占した。

「ツララちゃん~。懐かしいなこの感じ」

「だな。チワワ雰囲気あんま変わってないな。こう甘えられると、まだまだ子供だなと思うよ」


「やっぱりそう見られるんだね。……でもどうしてツララちゃんがここにいるの? 来るのなら連絡くれてもよかったのに」

「驚かせたかったからね。だから先にユーにだけ連絡取って、ここに呼んでもらったわけ」

「そうなんだ。でも今日は平日だよね? 学校休んで会いに来てくれたの?」

「お、いいとこに気づいたなチワワ。実は私、おとんの仕事の都合でこっちに帰ってきたの。……という事で、よろしくなわけなのさ」


 よろしくって……帰ってきたって……本当に?

 千和子は目を丸くする。


「……帰ってきたの、ツララちゃん?」


 余りに唐突で嬉しい出来事だったので、確認を取る。

 氷柱は笑顔で返事をくれた。


「まじまじ大まじ。驚いたかチワワ?」

「驚くよそりゃ。ツララちゃんが帰ってきたんだ……嬉しいな!」






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