彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
絵里花はそれだけで十分幸せを感じられるけれども、礼子にはちょっと理解できなかったらしい。答えに窮したのか、注文した揚げ出し豆腐を箸で割って、口の中に放り込む。そして、ちょっと首をひねりながら続けた。
「…ま、まあ、学者ってそんなものかもね。それで?……イケメン?」
気難しくても、無愛想でも、甘い言葉を囁かなくても、イケメンならばとりあえず許せてしまう。礼子の理屈では、そうだった。
礼子の問いに、絵里花は含みを持たせて押し黙る。その意味深な沈黙を読んで、礼子はますます探るような目で見つめてくる。
本当のことを言うと、惚気を通り越して、ただの自慢のように聞こえてしまうかもしれないと、絵里花は思った。でもここで、どうしても真実を言いたくてたまらなくなった。
「……うん。〝イケメン〟なんて普通の言葉では語れないほど、ホントにもう、すっごい男前……!」
絵里花がそれを言った途端、絵里花の表情よりも礼子のそれが輝いた。二杯目の生ビールが来てもそれには目もくれず、その目がマジになる。礼子は無類のイケメン好きだった。
「ホントに!?頭良くてイケメンなんて、信じられない!どんな人か、見てみたい!写真ないの?」