彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「え?写真?!……なくはない……けど」
『ない』と言ってしまえば良かったものを、こんな時絵里花は適当な言葉でごまかせる性質ではなかった。向かい合う礼子の目は、もう期待に満ち溢れて輝いている。
絵里花は観念してバッグからスマホを取り出し、画面を操作すると、礼子に差し出した。
礼子はその画面を見るなり、固まった。そして、みるみるその表情が曇って、眉間にシワが寄った。
「……絵里花。アンタ、外界と隔絶された収蔵庫にずっと閉じ込められてて、感覚狂っちゃったんじゃないの?」
思った通りの反応に、絵里花は言葉が返せない。
それもそのはず、絵里花の見せた史明の写真は、古文書に向かい合う〝いつも〟の史明を、収蔵庫の棚の陰から隠し撮りしたものだった。
ボサボサの髪に無精ひげ、ビン底メガネにヨレヨレのシャツ。その写真に写る史明は、どこからどう見ても〝イケメン〟には程遠かった。
「…め、メガネ外すと、ホント、信じられないくらいのイケメンなのよ?」
「えぇ~…?」
絵里花が弁解しても、礼子は疑わしい目を絵里花に向けた。
礼子が疑うのも無理もない。当の絵里花も、初めて史明の素顔を見たときには、自分の目を疑ったのだから…。