彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「でも、見た目だけじゃなくて、研究者としてホントに素晴らしい人なの」
「ふぅ~ん」
礼子は、もう特別な興味もなさそうな相づちを打ってから、二杯目の生ビールに手を伸ばした。
絵里花も小さくため息をついて、箸を取る。揚げ出し豆腐とサラダを食べて、カシスオレンジを口に含んだ。
「礼子は?今、彼氏はいないのよね?」
話題を変えて、絵里花の方から問いかけてみる。
「うん、いないわよ」
礼子は即答した。たしかに、彼氏がいたならば、イケメン坊さんに色目を使ったりしないだろう。
「彼氏みたいな感じの人は二人いるけど、付き合わないの。彼氏を作って束縛されちゃうと、自由にいろんな人にドキドキできないでしよ?」
礼子のこの感覚に対して、絵里花は同意も反論もできず、どうリアクションをして良いのか分からなかった。
「それに、恋人未満の、相手との駆け引きというか。ちょっとときめいたり、相手をドキッとさせて様子を見るのが好きなのよね~」
「ドキッと、ね……」
だけど、礼子の言葉の一部に、絵里花の意識が反応した。まさに今の絵里花が知りたいのは、史明を『ドキッとさせる』方法だった。