彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「ま、今日は私のことはいいのよ。それで?何か、相談があったんじゃないの?」
食事も随分進んだ頃、礼子から持ちかけられる。礼子ならば、絵里花の知りたいことを聞く、最も適当な人物に違いなかった。
「うん。さっき礼子が言ってた男性をドキッとさせる方法なんだけど、それを教えてほしいの」
絵里花は居住まいを整えて、正面から真剣な目で礼子に懇願した。そんな絵里花を、礼子は頬杖をつきながら、まじまじと見つめた。
「へぇ…、絵里花はとっくにそんなこと知ってるんだと思ってた」
困惑して、絵里花は眉を寄せる。知っていたのなら、こんなに満たされない心を持て余したりせずに、いろんな手段に打って出ている。
「そっか、絵里花の〝自分磨き〟は、女の目から見ると憧れるくらい素晴らしいんだけど、実はそれ、男にはあんまり効果ないんだよね。…そうねぇ。男をドキッとさせる方法はいろいろあるけど、どれが一番最適かは、もうちょっと深くあなた達のことを知らないと……」
礼子は柔らかい表情になって、優しく絵里花に笑いかけた。絵里花は安心してひとつ頷くと、史明の出会いからの出来事や自分の気持ちの変化を、少しずつ礼子に語って聞かせた。