彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「ちょっと横になるから、20分経ったら起こしてくれ」
――ええっ?!勤務中に寝ちゃうの?
絵里花は内心驚きつつも、「はい…」と心の声が表に出ないように、短く返事をした。
史明は大きな整理棚の向こうに行って、棚の中から収蔵品のように並べられていた寝袋を取り出し、それを床に広げるとその中に体を収めた。
どうやら、普段ここに寝泊まりするときは、こうやって寝ているらしい。そう思えば、史明は勤務時間なんて関係なく、昼夜問わずずっと働いているようなものだ。
「……なにか、用か?」
横になった史明から、声をかけられる。棚の陰からこっそり様子を窺っていたつもりだったが、バレているらしい。絵里花は少し慌てつつも、適当な言い訳を見繕う。
「……い、いえ。その。岩城さんは寝るときも、メガネをかけてるのかなぁ……って、思ってたんです」
「ああ……、テーブルの上に置いててくれ」
そう言って、史明は目を閉じたまま外したメガネを絵里花へと差し出す。絵里花は足音を忍ばせて史明に近づくと、そっとメガネを受け取った。
そして、そこに現れている類まれに麗しい相貌に見惚れた。息をするのも忘れ、そこから動けなくなる……。