彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
礼子は絵里花の語ることに真剣に耳を傾けてくれ、ところどころで質問して、自分の中に二人の物語を作り上げていく。……そしてついに、二人の物語はクライマックスを迎えた。
「それから?東京に行くはずだった岩城さんは、どうして此処に残ったの?どんな顛末で、あなたの彼氏になったの?」
身を乗り出した礼子から、肝心なところを尋ねられる。
「それは……」
絵里花は思わず唇を噛んで、その先の言葉を躊躇した。この唇には、あの時の史明の唇の感触が残っている。
それは、絵里花にとって一番大事な出来事でもあり、自分と史明だけが知っている誰にも侵されたくない出来事でもあった。
「『そばを離れたくない』って言ってくれて……それで」
「それで、恋人同士になったかなぁ…なんて思ってたけど、岩城さんは以前と変わらなくて、全然彼氏らしいことしてくれないわけね?」
図星すぎる礼子の指摘に、絵里花は頷くことしかできない。礼子は焼き鳥の串を取り、自分の皿の上でバラしながら考えた。そんな礼子を、絵里花は神妙な様子で見守る。