彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
そんな苦し紛れを言って、狼狽えている史明。そんな彼を見つめて、絵里花はまた胸がキュンと鳴くのを感じた。男としてはまるでダメなのかもしれないけれど、 こんな不器用な史明が愛おしくてたまらない。不器用な分、本当に無垢で純粋なんだと思った。
「だったら、一つお願いがあります」
「うん」
史明も泣かれてしまうことには弱いらしく、絵里花の〝お願い〟の内容を聞くよりも先に、反射的にうなずいた。
「今日の夕食は、私と一緒に食べてください」
その提案を聞いて、史明は腑に落ちないように絵里花を見つめて固まった。
「……そんなことでいいのか?」
「はい」
一緒に食事をすることが、どうして好きでいると表現することになるのか……。史明にとって〝デート〟の意味を理解するのは、少々難しいことだった。
だけど、絵里花は涙の残る顔を、ニッコリとほころばせた。史明はその綺麗な笑顔を見て唇をキュッと噛むと、ぎこちなく目を逸らしてテーブルに向き直り、古文書を片付け始めた。