彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜


するとそこには、もうすでに絵里花の愛しい人が待っていてくれた。いつもと変わらない〝ダサい〟を絵にかいたような格好。特に、防寒着として着ているブルゾンは、よれよれで古ぼけたものだった。

だけど、絵里花は全然構わなかった。こんな史明の本当の姿を、絵里花は知っている。息を呑むように端正な容姿の史明はこっそり隠しておいて、人々から奇異な目で見られても、密かに優越感に浸りたかった。


「お待たせしました」


くすぐったいような気持ちを抱えながら、絵里花が言葉をかけると、史明は身震いするように肩をすくめて応えてくれた。


「食事をするって、どこでするんだ?君に、どこか当てがあるのか?」

「それは……」


絵里花は言葉を潰えさせた。レストランのキャンセル待ちをもう少し粘りたいと思ったけれど、あてどなく無為に時間を潰すことに、史明は同意してくれるだろうか。


その時、絵里花のスマホの呼び出し音が鳴った。「すみません」と史明に断りを入れてスマホを取り出してみると、例のレストランからの着信だった。
胸の高鳴りを押さえながら電話に出て、話を聞く。すると、絵里花の願い通り、予約のキャンセルが出たとの連絡だった。

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