彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



史明とのデートが叶ったこと、そして、あのレストランに行けるようになったこと。あまりにも旨くいきすぎて、まるで魔法にかかっているような感覚になった。


「とても感じのいいレストランがあるんです。そこの予約が取れたので、これから行きましょう」

「え…、レストラン!?俺のこんな格好でも行ける所か?」


ラーメン屋か居酒屋を想定していたのだろうか。史明はあからさまに嫌な顔をして、敬遠した。たしかに、史明のこのくたびれたブルゾンでは浮いてしまうかもしれない。だけどそれは、このレストランに限らず、どこでも同じことだ。


「大丈夫です。カジュアルな服装でも行ける所だから、断られたりはしませんよ」


絵里花はお決まりの笑顔で、史明をいざなった。史明のネガティブな思考に囚われていては、何も行動は起こせない。
史明が「やっぱりやめておこう」と言い始める前に、絵里花は素早くタクシーを止めて、半ば強引に史明をそれに押し込んだ。


「これから行くレストラン、とってもステキな所なんです。一応フレンチのお店なんですけど」


タクシーの後部座席で隣り合って座る史明に向って、とりあえず話しかけてみる。けれども、史明はまるで気乗りしないようで、返事らしい返事はしてくれなかった。


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