彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「『キリシタン』て、君。いつの時代の言葉を使ってるんだ?」
「……え、いや、それは……」
史明の言葉を先回りしたつもりだったのに、当の史明から突っ込まれて、絵里花は違った意味でもっと恥ずかしくなる。
そんな絵里花を見て、史明はフッと笑いを漏らした。そして、レストランのドアを開けて、絵里花を迎え入れてくれる。
たったそれだけのことに、絵里花はとても嬉しくなって、宙を歩くような感じだった。
……しかし、そんな幸せで満ち足りた気持ちは、長くは続かなかった。
「申し訳ございません」
絵里花と史明の目の前で、店主と店員が深々と頭を下げた。
なんでも、店員同士の連絡がうまくいっておらず、飛び込みで来たお客さんをキャンセル待ちで予約をしていた絵里花と間違えて、通してしまったらしい。
「そんな……」
最高潮に高まっていた気分を挫かれて、さすがの絵里花も釈然としない。
「そのお客様には、すでにお飲み物もお出ししていて……」
今さら「間違いでした」と追い出せない状況らしい。
「お店の隅の方にでも、お席を作っていただくわけにはいかないでしょうか?」
諦めきれない絵里花は、往生際悪く粘ってみたが、店主はもっと困惑するばかりだ。