彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「あの、すみません。予約をしていた栗田です」
その時、背後にいた新たな来客が声をかけてきた。店主が目配せして、店員の方が応対に回る。
聞き覚えのある名前と声。絵里花も無意識に、チラリと新しい来客の方へ顔を向けた。
「あ……!」
思わず絵里花は固まってしまう。絵里花の元カレの崇。そして、絵里花から崇を奪った今日子。
そこにいて、同じように固まっている二人を見た瞬間、絵里花は全てを覚ってしまった。崇は絵里花と別れた後も、クリスマスにはこのレストランに来ていたことを。そう、おそらく去年のクリスマスも今日子と一緒に……。
「クリスマスなんだから予約くらいしとかないと、入れるわけないじゃないですか。絵里花先輩にしては、読みが甘かったですね」
今日子の口からいきなり飛び出てきた、敵意むき出しの無礼な物言いに、絵里花は絶句してしまう。どうやら絵里花と店主とのやり取りが、耳に入っていたらしい。
すると、場を和ませようとしたのか、崇の方が口を開いた。
「久しぶり。……元気?」
「うん、元気よ。とってもね」
おまけに『とっても幸せなの』という意味も込めて、絵里花はニッコリと笑ってみせた。