彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
少なくとも史明はここに居てくれる。絵里花は、ずっと彼の側に居たいとだけ願っていたわけだから、その願いは叶えられたとも言える。
――だけど、だけど……!この心のモヤモヤは、どうしたらいいの?!
想いが通じ合っていると知ってしまうと、そこにある〝愛〟を時々確かめたくなる。普段無愛想で不必要なことを語らない史明だからこそ、その気持ちは見えにくい。
愛を語らずとも、せめて普通の恋人みたいに食事に行ったり映画を見たりデートをして、自分が史明にとっての〝特別〟だと思うことができたらいいのだけど……。
「……20分経ったら起こしてくれって、言ってたんだけど?」
突然、史明の不機嫌そうな声が響いて、絵里花はガバッと顔を上げた。
「え…?20分、もう経ってます?」
「1時間経ってるよ。さては君、そうやって寝てたんだな?」
史明は呆れたようにそう言い放つと、絵里花の向かいへと腰を下ろした。
――寝袋で堂々と1時間も寝てたアンタに、言われたかないわよっ!!
そんな心の中の悪態を、絵里花は必死で押さえ込んだけれども、少しくらい言い返してやらないと気が治らなかった。
「岩城さんこそ、あの寝袋はさぞかし寝心地がいいんでしょうね。20分が1時間に延長してしまうんですから」