彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



「……岩城さん。それ、見えてるんですか?」


もともと、史明のメガネのレンズは分厚い上に、不精がたたって曇りがちなのだが、この時ばかりは真っ白になっていた。


「ああ、ほぼ見えてない」


史明はそう答えながら、箸を持っていない方の手でメガネを取って、テーブルの上に置く。突然、目の前に現れたあまりにも麗しい相貌。絵里花はラーメンをゴクリと呑み込んで、密かに固まった。


――ラーメン食べてるだけなのに、どうしてそんなにステキなのっ……!?


さっきまでの史明となんら変わりはないはずなのに、ドキドキして呼吸が浅くなる。チラチラと史明を確かめるのに忙しくて、ラーメンを食べることもままならなくなる。
絵里花は意味もなくチャーシューを並べ直したりして、落ち着かない自分をごまかした。


そうしているうちに、史明は早々にラーメンを食べ上げ、再びメガネをかけた。


――あら。〝ときめきタイム〟は、もう終わり?


そのあまりの短さに、絵里花は落胆の息を漏らす。どうにか、再びラーメンをすすり始めると、ほとんど無意識にその疑問が口を突いて出てきていた。


「……岩城さんって、コンタクトレンズを使ったりはしないんですか?」


そうしてしまうと、この麗しい史明の素顔は隠して置けなくなるが、絵里花にとってもそれは日常的なものになる。

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