彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「あのレストランの後とか、崇くんといつも行っていたバーがありますけど、そこに行ってみますか?」
「……『崇くん』か……」
史明は、絵里花の言葉の一部が引っかかるようだ。その真意を探ろうと絵里花がさらに見つめると、
「さあ、行こうか」
史明は絵里花の眼差しを遮るように立ち上がった。
すると、そんな史明の姿を見直して、絵里花が指摘する。
「言っときますけど、岩城さん。その格好じゃちょっと、メガネを外してもマトモにはなれないと思います」
「え……?」
史明は立ちすくんで、自分のよれよれのブルゾンを改めて見下ろした。
「学会の前にスーツを買いに行ったみたいに、洋服を買いに行きましょう。せっかくですから、岩城さんの顔に見合う服を着てないと」
絵里花がニッコリと微笑みかけながら提案する。史明も自分が言い出した以上、頷かざるを得なかった。