彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
今日子はもう、その場を立ち去るしかなかった。フロアにいる客やカウンターの向こうのバーテンダー、皆んなの窺うような視線がすべて彼女に注がれていた。
仏頂面の今日子が踵を返してバーを見つけ出ていくと、崇は足を動かして、史明が座っていた場所に落ち着いた。
「大変でしたね」
と、バーテンダーがおしぼりを手渡しながら笑いかける。
絵里花と顔見知りのこのバーテンダーは、当然事情を理解しているはずだ。
「いつもの、ください」
崇はそう言いながら恥ずかしそうに、バーテンダーに苦い笑顔を向けた。