彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
大通りに出てバス停を見つけると、史明は絵里花よりも先に時刻表を確認する。
「路線は何番?」
「ここからだと……5番ですね」
そんなやり取りをしている間にも、二人の目の前にバスが到着し、確かめてみると5番線のバスだった。
「あの……、やっぱり。岩城さんがこれに乗ってると帰れなくなるから……」
バスに乗り込もうという時、この期に及んで絵里花は躊躇した。史明はチラリと絵里花へ怪訝そうな視線を向けたが、何も言葉を返すことなく先にバスのステップを上った。
絵里花も急いで後に続くと、史明はすでに座席に座っている。迎え入れてくれるように場所を空けてくれたので、絵里花は史明の隣へと落ち着いた。
バスが発車し、絵里花の住むマンションの方へ向かい始めると、絵里花の思考は落ち着くどころか目まぐるしく動き始めた。
このままだと、史明は確実に終バスには乗れない。タクシーで帰るには、とんでもなく高くつく。それなのに、絵里花のマンションまで送ってくれるということは……。
――それって、つまり。岩城さんは、私のマンションに泊まろうと考えてるの?!
絵里花の思考が深まっていくのと共に、膝に乗せた両手がスカートを握りしめて固くなる。絵里花は思わず顔をあげて、史明の表情を確かめてしまった。