彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
「……なんだ?」
視線を感じた史明が、前方から絵里花へと視線を移す。
「い……、いえ。なんでもありません」
史明に見つめられるだけで、絵里花の頬が熱を持って赤くなっていくのが判る。史明の真意を確かめられないまま、ぎこちなく目を逸らした。
史明が何も喋ってくれないので、必然的に絵里花の妄想は勝手に一人歩きし始める。
絵里花のマンションまで送ってもらったのなら、多分『ちょっとお茶でも飲んで行きませんか?』ということになる。お茶を飲んでてもっと遅くなると、『もう泊まっていったらいいですよ』となる可能性が高い。それから、順番にお風呂に入って、寝る準備をして、その後は……。
――ああ!!しまった〜〜!!勝負下着、準備してない!!!
今日こんな展開になるとは想定していなかったとは言え、初めて一緒に過ごす夜に万端の準備を整えられなかったことは、絵里花の一生の不覚だった。
史明もさすがに、絵里花がソワソワして落ち着かないことに気がつく。
「どうした?トイレか?」
「ち、違います!」
「でも、落ち着かないようだが?」
史明なりに心配してくれてるようだが、絵里花は心の内をありのまま明かすわけにはいかない。