彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
片付ける物なんてあまりないのに、モタモタして不自然に動かない絵里花。それを不審に思った史明が声をかける。
「なにしてるんだ?もう帰ってもいいんだぞ?」
「……え」
指摘されると、何か次の行動に移すか、モタモタしている理由を説明しなければならなくなる。絵里花はとっさに、頭を回転させて返答した。
「あの、その……。今日の晩御飯、何にしようかな……って考えてたんです」
「ふうん……」
特に何の興味も示さず、史明は生返事のような相づちを打った。だけど、こんな反応はいつものことで、絵里花は気を取り直して会話を続ける。
「岩城さんは、いつも晩御飯、どうしてるんですか?」
「……俺は、家で母親が用意してくれてるものを食べてるよ」
――やっぱり…と、絵里花は心の中で呟いた。以前、史明を家まで送っていったときに、史明の母親とは対面している。
「ここに泊まり込むときは、どうしてるんですか?コンビニのお弁当?」
「うん…?コンビニで弁当を買うこともあれば、近くのラーメン屋とか……というより、泊まり込むときは没頭してるから食べないことも多いけど」